五代目歌舞伎座に思う
木挽町(こびきちょう)と云った時代に建てられた歌舞伎座が、東銀座の町名となっても同じ地に三年の年月をかけて元の様な内外装で、四月に柿葺落(こけらおとし)の公演が華々しく開催された。朝昼夜の三部制だが出演する俳優(役者)の名前から市川團十郎、中村勘三郎の大名題が抜けて、残された大名題は向こう三カ月に一人で七役や八役を演じる事を、何故か一抹の不安を感じるのは
私だけでは無いだろう。中村富十郎、中村雀右衛門、中村芝翫は既に亡く、義太夫狂言に相応しい口跡のある役者の出現を、心ある沢山の観客は待ち望んで新装なった歌舞伎座に通うことになる。
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